黒猫の香音(前編)

日が傾き少し肌寒くなってきたのでそろそろ帰ろうと思い、まだ夢中になってどんぐり集めをしている陽の元に寄る。


「陽ぃ、もうお外が暗いから帰ろー。」

だが陽は即答で拒む。

「やだ、まだどんぐりころころする。」



…出た、陽のわがまま……



馨が重々しく溜息を付く。


「嫌じゃないよー、パパ待ってるよー。」


それでも何とか怒鳴らずに車に乗せようと試みる馨。


「いや!」


それでも首を強く横に振る息子のみっともない姿を見て、馨は頭に血を上らせた。