「な、何してるの?」 「心配かけんな、アホバカ」 「……っ」 音を立てずに、近付いてきた藤くんの暖かさにそっと包まれたわたし。 「藤くん…」 どうして今、彼がわたしを抱きしめるか分からなくて、その理由が知りたいと思うのに、知らなくていいかなと思えるのは彼が優しいからだ。 今だけは全部忘れて、彼の優しさを受け取りたい。 なんて、思ったわたしを藤くんはどう思う? 風邪ひいてるのにごめんね。 心配かけてごめんね。 「ありがとう、藤くん……」 心の中で謝って、わたしは感謝の言葉を口にした。