「奈帆!」 「…は、はいっ」 焦ったような藤くんの声が聞こえてきて、心配をかけてしまったんだと分かった。 「無事なの?」 「大丈夫です!えっと、連絡するの忘れてて…ごめんなさい」 「…大丈夫ならいいや」 ——ワン 電話越しから聞こえてきた犬の鳴き声と、電話を通さずにも聞こえてきた犬の鳴き声。 もしかして……、 「藤くん、うちまで来てくれてる?」 「…いや、」 藤くんの言葉を聞く前に電話を切って、慌てて外に出たら 「……っ」 気まずそうにこっちを見る藤くんの姿があった。