「…奈帆」 彼はもう一度、わたしの名前を呼んだ。 ベッドの上、向かい合った藤くんと目が合う。 「……っ」 「お願い、奈帆。 寂しいからさ、一緒にいてよ」 藤くんはその言葉と共に、わたしを自分の腕の中に閉じ込めた。 強く、強く、身動きが取れないほどに強く、抱きしめた。 「……っ」 藤くんは分かってない。 彼のこの行動がわたしにどれだけの期待と悲しさを与えているかを。 名前を呼ばれて、抱きしめられて、彼はわたしのことを少しは好きでいてくれるんじゃないかって期待して。