「すぐ戻ってくるから」
女の子の方に向かって歩く藤くんの背中に手を伸ばしそうになったのは、多分気のせいだ。
*
「はぁ…」
1人になった教室で、作業をのんびりと進めているけどため息が止まらない。
幸せがどんどん逃げて行っちゃうよ……。
元々少ないのに。
これも全部、藤くんのせいだからね。
すぐに戻ると言った藤くんだったが、彼が教室から姿を消してすでに20分は経っている。
あの感じだと、女の子は藤くんに告白するのかな……。
告白されたら藤くんはなんて返事をするのだろう。
もしも、藤くんに“彼女”が出来たら、もう勉強を教えてもらうことことは出来なくなっちゃうかな。
嫌だと思ってたのに。藤くんと関わることは極力避けたいとずっと思っていたのに。
どうして、関われなくなると思ったらそのことを寂しいと思ってしまうんだろう。

