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奈帆を家まで送る帰り道、手を繋いで歩けることに顔が緩みそうになる。
「幸せ……」
小さく独り言のように呟いた奈帆の言葉は、しっかり俺の耳にも届いていて、心の中で「俺も」と返事をした。
……そういえば、奈帆も俺もあの事に触れることなく普通に会話してるけどさ、俺…奈帆にキスしたんだよな。
先輩のことを待たせてるから早く帰りたいという奈帆にイライラして、無理やりしたキス。
最低なことした俺のこと、奈帆は大嫌いだと言ったけど今は…俺のこと好きでいいんだよね?
奈帆に「好き」と言ってもらえたのに、急に不安になってきた。
「な、奈帆」
「ん?どうしたの?」
「……キスしたことなんだけどさ、」
「あ、う、うん」
「ごめん。先輩のことにイライラした」
奈帆は「えっ」と驚いた声を出した。

