「美羽！」


「祐希…！」


私は思わず祐希の胸に飛び込んだ。

祐希は一瞬驚いて–––私を優しくぎゅっと抱きしめてくれた。

その優しさに、涙が溢れた。


「どうやって…」


「美羽のクラスの剣道部のやつが美羽が無理矢理屋上の方に連れて行かれるのが見えたらしい。追いかけたけど、屋上に連れ込まれる方が早かった。だから職員室に助けを求めに行こうとしたんだけど、その前に俺と会って俺と美羽が仲いいの知ってたから事情を話してくれた」


「でも…鍵はひとつじゃ…」


「なんと俺は鍵開けができるんだよ。いつでもヘアピン3本持ち歩いて、いつでもどこでも開けて差し上げます、ってことだ」


涙がぼろぼろ出てくる。

祐希はそんな私の頭を優しく撫でてくれた。


「で、お前は何？」


「ふん…俺のこと、忘れたんだ」


冷たい声。


「忘れた…？会ったことあったっけ」


「…藤内光澄って、知ってるか？」


その時。


「うっ…」


祐希は頭を抱えて、ふらっとよろめいて…

倒れた。


「え…祐希？！」


「ふん…思い出そうとしてるんだ。保健室にでも連れて行ってやれ。俺は記憶がない義高に興味はない。そいつが思い出したら伝えろ。『もう一度、殺してやる』と」


彼はそう言って去って行った。私はほっとして、祐希を保健室まで引きずって行った。


途中、剣道部の人が部長の危機と言って手伝ってくれた。