そうして立ち尽くす彼女が次に聞いたのは、甲高い指笛、そしてそんな彼女の目の前に立ちはだかったのは……

「兄さん!」

「カルバドス、テメェはそれでいい」

 ルーテシアの幼馴染、そしてその後ろに立っているのは彼が特に信頼している、そしてルーテシアにとっても幼い時によく遊んでいた年のころは下は13から上は18までの十数人の男女だ。そして彼らは……一斉に跪いた。カルバドスを筆頭にルーテシアに頭を垂れたのだ。

「我ら一同、御身を守るべく、その肉の一遍、髪の一本まで貴女の剣、盾としてお守り差し上げる」

「カルバ、ドス……?」

「御身のそばを離れず、常に御身に忠誠仕る事……」

「い、いやだ……」

「次期シュットハルト家当主、カルバドス・ブラン・シュットハルトの名において、お誓い申し上げる」

 とうとう、此処まできてルーテシアは何も考えられなくなった。

 幼馴染であったカルバドスの口ぶり、確かに今までの粗野な言い方を考えれば、そこには純然たる立場の違いが見て取れた。十年以上はともに過ごした幼馴染のはずだった。だが、今は違う、そしてそんな彼に従い同じく自分に最敬礼をする友人たちを見てルーテシアは分かってしまったのだった。

 ルーテシアはきっとこれまで、本当の意味で彼らの仲間ではなかったのだという事に。