「訳……?」

 聞きたくない話、見たくないものをこれでもかとばかりに目の前に突き付けられ息苦しささえ感じるルーテシアに今度はベルトラインが口を開いた。

「蛇の道は蛇。危険な追っ手の目をごまかす為に、真っ先にあり得ない候補である山賊という選択肢に私は貴女と飛び込んだ。貴女を守るために」・

「私を……守る? ジイジ?」

「良くお聞きなさい。ルーテシア様。彼ら山賊はヴォークリンデ王国七大将軍が一、亡きシュットハルト将軍が、先代国王亡き後に勃発した跡目争いで反乱の疑いありと処刑され、その一家郎党のみならず反逆者として大部分が殺されてしまった軍団をシュットハルト将軍の子息が束ねた落人兵達とその家族で興した集落」

「子息が束ねる……じゃあ頭領は‼」

「そして腐っても親父が残した変なプライドは山賊にまで落ちぶれた俺達がお前たちを受け入れる一因となった」

「私は祖父の代から代々お仕え差し上げていたとある貴族家、件の跡目争いの飛び火を受け消滅させられてしまったその家から貴女を連れ出し、共にかくまってもらうように彼に頼んだ。彼の父はワシの新兵時代の同期、今でも覚えておるよ。面倒ごとを引き受けたようなあの時の若造の顔が」

 ベルドラインの貌は懐かしむ。何か、諦めを見せたように。