「正規兵一個中隊がアイツラとお出ましかよ! 同業売りやがったなあのクソどもが!」

「オヤジ! 今までの規模とダンチだぞ!」

 道中、目の前から押し寄せる敵勢力を認めた時には声を張り上げた頭領は、山の高い所からまるで濁流の様に襲いかかってくるその数に悪態をついた……のに、なぜかその顔は楽しそうに口元が歪んでいた。

「オヤジ!」

「父さん?」

 そんな父に声を荒げるカルバドス、そして何を思っているか測りかねるライナに対して振り向いた頭領の言葉は意外なものだった。

「テメェら! この時が来ちまった。ベルトライン殿に合流したらすぐ戻ってくるからそれまでカミさん頼むわ。オイ! ガキどもついてこい! 」

“何言ってやがる頭領、アンタの嫁さんは俺達なんかにゃ守れねぇよ。寧ろ油断したら俺らの方が守られちまう!”

“御大が喜んでるぜ大将! 道標の血筋を守る。俺達があの時手にできなかった誉じゃねぇか!”

“十何年だ若? 泥かぶった甲斐あったじゃねぇか。アンタ今確かに追いついたよ! ヴォークリンデ、7大が一将、シュットハルト将軍に”

「シュットハルト将軍……父さん?」

 里の男達が嬉しそうに気合を入れるその間を縫うように、歯を見せながらベルトラインへと歩んでいく頭領。それに反して、その後に続くのは、真剣な表情で父の背中を見据える頭領の長男が、とても不安げな表情を浮かべる二男の手を引っ張っていた。