そして、歩くたびに視界に入る自分の髪の毛も鬱陶しくてしょうがない。
 絹の様な白い髪、光にあたれば白銀の様に輝くルーテシアにとって自慢の一つでもあるそれは、先日目が覚めた時には既に染められていた栗色が異和感でしかなく、足並みと共にチラチラと目に入るのは苛立ちを募らせる。

 ツイッと、隊列の先頭に目を向ければ、歯を食いしばり周囲を警戒する返り血も乾いた頭領とカルバドス、その真後ろにライナ、そして頭巾をかぶった彼らの母親がついていて……。

 彼らもアレからルーテシアに顔を見せる事が無い。声掛けるどころか挨拶すらない。
 理由は分かっている。彼女があの時カルバドスの手を拒絶したから。そしてその意味もわかっていた。

 今ではチラッと彼女に目を向ける事もあるが、やはりその目には暴力と殺意の炎が絶えず滾っていて、自分を見ると言うよりは自分越しに隊列の後方に注意を払うと言った感じだった。

 里から出て、たった二日の出来事だ。
 自らをこれ以上ないというほど愚かだと悟ったルーテシア、この時になってようやく分かってしまったのだ。