それでも、ライナは十年以上カルバドスの後ろをおっかけ続けてきた弟だ。

「何かあったんだね。 父さんに殴られながら何を知ってしまったの兄さん? どうしていつも僕に教えてくれないのさ?」

 だからうすうす気づいてはいた。それは自分が敬愛する強い兄として、弟に心配かけさせんといつも浮かべる誤魔化しの笑顔だったのだから。

「それほど頼りない? 僕がまだ元服を迎えていないから?」

 そして、実はそれこそがライナにとって一番嫌いな兄の表情だった。

「いつになったら僕が隣に立つ事を許してくれるんだ。僕だって頭領の息子、山賊なんだよ兄さん……」

 この作業は、当日の夜には終わり、そして里の者達はその日のうちに里を後にした。

 集団での里移動が気付かれないようにと、嘗ての住まいに火を放つ事もなく……