だがそれを兄がぶっきらぼうに言い放つあたりは、何とか自分に心配をかけまいと演じている所がある事に気付いたライナ。そしてそんなライナはどうしてこのような事態になったのか未だに釈然としなかった。

「それなんだけど、なんで今回僕たちはこの里を捨てるまでになったの? 状況的にもっと酷い目見せた時だってここまでの事は無かったでしょう? 判らない事が多すぎるんだ。それにこんなときにも関わらず、父さん母さんの姿が見当たらない。この場を相談役と、兄さんに任せて今はどこにいるのさ?」

「そう、だよな。確かに俺達がただの山賊だったら……、アイツが普通の女だったら、ここまでには無らなかったのか? なぁライナ、オヤジと母ちゃんは好きか? お前、ルーテシアのことどう思う? もしもう2度と昔のように……」

「え、と……兄さん?」

「……ワリ、なんでもねぇよ。オイ! 大丈夫か! 俺に任せろ! 運んでやる!」

 そうして良くわからないと言う顔をする弟に、気を紛らせるようにニカッと笑ったカルバドスは、目の前で重そうに物を運ぶ里の衆の輪に加わって行った。