「服に、靴に、それは置いて行かれませい。移動の邪魔になりますぞ! 」

「でも……元服用に折角作ったのに」

「ルーテシア様、時は待ってくれませぬ!」

 あんな事件があって、2日が経った。今ルーテシアは、ベルトラインの指示のもと必死に荷づくりを行っている最中だ。この小屋を、この里を捨てる為に。

「じ、ジイジ?」

「急がれよ!」

 あの後気を失ったルーテシアは、カルバドスにおぶられてこの小屋に送り届けられたと言う。親しい者から話を聞けば、その時に迎えたベルトラインは涙を流して気を失ったルーテシアを抱きしめたとのことだ。

 実際にその翌日、ルーテシアが目を覚ませば、ベルトラインはあの手この手でルーテシアに構った。彼女が好きな食事を作り、普段は彼女が受け持っている家事ですらベルトラインが行う。

しかし2日目となった今となっては、そうして甘々に接したベルトラインが珠のような汗をかきながら手早く荷物を纏めていくのがどうにも分からなかった。