「ルーテシア、大丈夫か?」

 やっと落ち着いたかのような、カルバドスの声。少しずつ夜目にもなれたルーテシアは、大きく成長したカルバドスが自分の目の前で片膝をつき、彼女に呼び掛けている事がわかった。優しく、温かみのある声だ。普段当たり前のように聞いていたいつもの彼の声で、ただ先ほどの事があった事を考えれば、その普段通りの声が彼女にとってなにより大切な声なのだったという事に気付かせる。

 そうしてやがて、両肩に降りる、彼の手の重み。

「よかったぁぁぁ。お前! 帰ってこないからどうしたんだと。良かった! 生きててくれて。良かった!」

 肩をカルバドスに抱かれたルーテシア。目の前の幼馴染は本当に幼馴染である事をこのときやっと実感し、こみあげた安心感からその瞳に大粒の涙を浮かべた。

 やっと終わったのだ。そう思って疑わなかった……はずだった。

「若、ライナ、火ぃついたぜ」

 誰か、友人の一人が気楽にそう声を挙げるまでは。