「兄ぃ……若頭、そろそろいい加減にしなよ。勝負はついているだろう?」

 どこからともなく現れたライナが、やはり頭領一家の男子か、戦斧を以てカルバドスのとどめの一撃を防いでいたのだ。

「ライナ……邪魔だ。どけ」

「次の相談役として意見するよ。今回の戦い。お姉ちゃんを守れたってだけで大きな戦果だ。今若頭は、お姉ちゃんを害されたその怒りだけで動いている。確かに、その男を殺さないのはメンツに関わる所はあるよ。でも、そんなメンツは頭領が挽回してくれる。問題は若頭、この行動は感情の暴走にも等しい。次代の幹部としては、そういう所を見過ごすわけには行かないんだ。そんな若頭が頭領になった時、軽率にならないとも限らない」

 だがライナはルーテシアよりも一つ年下、3つ上で、さらに大きく成長したカルバドスが、殺すつもりで振るった斧を何とか防ぐ彼は苦しそうに、息絶え絶えにそう言うしかなかった。