「なんだ。そっか、そうだよな。」

 一瞬でも手を止めたカルバドス、彼にもうこれ以上人を殺してほしくないと言うルーテシアの願いが届いたのだと思ってしまった彼女は自らの愚かさを悟った。

「お前の仇だもんな。俺がやるべきじゃあなかった。悪いな。最後の一人しか残してやれなくて。お前の獲物だった。オイ!」

 彼がルーテシアにそう言うとともに、そのわきに立っていた友人の一人が腰ベルトから刃渡りの長いナイフを抜き、そっと握り手をルーテシアの手に押し付ける。

「大丈夫だ。初めは皆怖い。でもお前は安心していいんだ。何があろうとお前のそばには仲間がいる、それに、殺しきれなければ……俺が……」

 そういう事ではなかった。ルーテシアはもうこれ以上人に死んでほしくなかったのだった。たとえそれが、自らをあと少しで辱め、殺そうとした相手であっても。