「カルバドス……?」

「おう、ルーテシア。無事、じゃあなかったみたいだな。」

 その声だって。昔から聞き馴染みのある声ではあった。なのに……

「周り込め。敵は逃がすな」

“イテェェ、イテェェヨォォ‼”

“くそ! だからこの任務は受けたくなかったんだ!”

 燃えさかる、猛ける炎のような赤い髪を持った幼馴染が口から紡いだ言葉は、ルーテシアの心を底冷えさせるような冷たさを持っていた。

 カルバドスはルーテシアに一切の目配せすらしない。彼が見ているのはカルバドスが率いていた、ルーテシアにとっても昔から付き合いのある友人達が放った矢の雨を受け、痛みに泣き叫ぶ里外の男たちの姿だった。

「その肩の傷、矢が掠ったものだな。誰にやられた?」

「あ、あの……」

 視線を外さずにそう聞いてきたカルバドス、だがルーテシアはあまりの幼馴染が醸し出す雰囲気の恐ろしさに反応ができないでいた。