「おい! この女……」

「絹のような……白い、髪だと?」

 突然一変した空気、男達を恐れるルーテシアでさえ、彼らが何に驚いたのかは分からない。

「命がけの山中探索、だったんだがなぁ。どうやら俺達にも運が回ってきたらしい。遊びは終わりだ。この女をそう呼んでいいものかは分からんが、まず殺す。確実に、その御首級(みしるし)は頂戴するぞ」

 その中のリーダー格が口を開いたかと思えば、他の男達も真剣な眼差しに殺気を込めてルーテシアを睨みつける。

 一歩、また一歩と四方から詰め寄られるルーテシア。

―こわい! コワイ! 怖い! コワい! 恐い! コわい! 殺される! ここで、殺される。

「い……やだ、いやだ! 死にたくない! 死にたくない! 助けて!」

「観念しろガキ‼」

「殺せぇぇぇ!」 

「誰か、誰か助けて!」

 男達から発せられるオーラに取り乱すルーテシア。彼女の悲痛な叫びは男達の大声にかき消され、そうしてついに男の一人が剣を振り上げた。

「御命、頂戴‼」

「ヒッ!」

 気迫のこもった声、そして振り下ろされる剣、死に直面し、恐怖に絶望に高まる彼女の神経。それは残酷でもあった。集中力高まり、男が振るう剣が半ば遅くなったかのように見える。でも、だからと言ってそれに反応できるだけの度胸も、身体能力も彼女にはなかった。