「おい、こっちだ!捕らえろ!必ず殺せ!!」

「見失った!」

「そこを10時の方角、任せろ。目標は俺が見定めている!」

「この山道、歩きなれてやがる。間違いねぇ。捕まえる必要なんざねぇ。直接弓でねらえ!」

 既に辺りは暗くなり始めていた。 

 森で男と鉢合わせをしてから結構な時間が経っていた。だがそれでも彼女は男と、その男が連れていた他の仲間たちから未だ逃げおおせているには至っていない。

 必死に後ろから聞こえる男たちの大声から逃れるように山を走るルーテシア。

 既に息は上がり、肺から喉にかけては血の香りが混じった息を吐き続けていた。