そうなのだ。月日が経つのは速いものでカルバドスが元服を迎えてから2年が経過した。

 寧ろ目の前の重要事項はルーテシアの元服だった。

 ガキ大将が元服をもって大人として受け容れられているところを見て、ルーテシアもそれに倣おうと思っていたのに、肝心の彼は全く参考にならなかったのだ。

「にしてもあれだ、お前もうすぐ大人になるってのに、いまだにチンチクリーンなんて、ちゃんとジジイに食わせてもらってんのかぁ?」

「ジイジ関係ないし! っとにデリカシーの無い!」

「がは!」

 とは言え、自分は大人になることを受け入れているのだ、だと言うのにこの幼馴染はそれを邪魔しようとしているらしい。

 そうして、ついに我慢の限界を突き破ったルーテシアは、思いっきりカルバドスの頬をひっぱたいてやった。

「うわぁ、お姉ちゃん。今の一撃、完全腰の入った有効打……だよ?」

 平手打ち、というよりも掌打に近いかもしれない。

 これを思い切り浴びたカルバドスは打ち所が悪かったのか、今の一撃に完全に意識を刈り取られ、グラウンドに万歳して倒れこんでいた。

“や、やべぇ。世界広しといえども若にあんなことできるのはルーテシアだけだよ”

“カルバドスの兄貴が若なら、ルーテシアは姉御だよな!”

 そんなひそひそ話に華を咲かせる里の同世代や少し年下たちに、ルーテシアが目をやれば、彼らは皆その姿勢を改めた。