「如何したのお姉ちゃん。浮かない顔してる。何かあった?」

「ん?あぁゴメン。何でも無いのライナ。有り難う! 」

 久々に見てしまった悪夢を思い出し、表情を曇らせたルーテシア。そんな彼女は、隣を歩き不安そうに彼女を見つめるライナの言葉に一転明るく振る舞った。

「で、これよねぇ」

 次いで見せたのは呆れたような表情。

 多感な乙女とは打って変わって、目の前で繰り広げられる至極単純な光景に溜息すらついてしまう。

“今日こそ若を張っ倒す!”

“んでもって簀巻にしてボコボコだぁ!”

「どうしてライナ程に気が利いて優しい男の子の兄さんが……」

 視線の先には若い男子達が楽しそうに盛り上がっていて……、

“おもしれぇ事言うじゃねぇか! 良いぜぇ! 来いやぁ!”

「いつまでたっても大人になれない大バカ者な訳?」

 そんな男子達の大声に、やはり威勢よく笑って挑戦を受け付ける幼馴染が立っていた。

 ルーテシアの幼馴染、カルバドス。

 元服し、”若”と呼ばれるようになっても、相も変わらずに偉そうにバカ笑いをあげ続ける彼をその瞳に入れるなり、彼女は疲れたように片手で目を覆った。