―やべぇ、コイツ! 強い!

 男は、気づけは目の前へと移動していて、その慣性の力をいかんなく発揮させた横薙ぎの一撃を繰り出し、

―なんだよ! 今まで訓練相手してくれた大人たちよりも強いじゃねぇか!

 かと思えば、それを死に物狂いに武器で受けとめるゼロ距離のカルバドスの鼻に頭突きを放る。鼻に受けた衝撃、そして細かい何かがはじけた音が脳裏に響いた。

 一瞬の視界のぐらつき、まるで時間がゆっくりと遅くなってしまったかのような光景。

 その先に見えるのは、見ていられないと両手で自らの顔面を覆う弟のライナ、顔を歪めながら歯を食いしばる彼の母親、そして……顔のいたるところから、眉間へと皺を集中させて、この光景を、息子のカルバドスを食い入るように見つめる父親だった。