「……ジジイ。ルーテシアは俺に会えないって泣いていなかったか?」

「小僧ごときに揺れる方ではないわ。だがつまらなさそうにしておるよ。こたびは小僧の元服。で、あれば弟のライナに会わせるわけにもいかんのでな」

 なんとなしに言うベルトライン、だがそれで十分だった。その言葉に、今日元服を迎えようとする悪戯小僧は憎たらしい笑顔を浮かべたのだから。

「ジジイ見とけ。すぐ終わらせてやる。んでもって元服して、すぐ顔出してやるよ」

 これから始まることはカルバドスだって分かっていた。それでも、彼は気合を入れた。まるでベルトラインを驚かし、その魂を吹き飛ばしてしまうほどに大きな咆哮をあげると、やがて広場の中心へと向かっていった。

 その中心には、カルバドスの死を以て身の自由を約束された捕虜の男が血走らせた目と共に笑って対戦相手の少年を待ち構えていた。