「え? 禁止って……でも彼の元服まで一月半あるんですよ! カルバドスは何も言わなかったんですか!」

「これは寧ろあいつが俺に頼んできたことだ。俺もそのつもりではあったが。まぁ驚いた」

「ジイジ!」

「郷に入れば郷に従え。ジジイの答えは以上です」

 突然の頭領の発言にはさしものルーテシアも言葉を失った。

「それと、これも悪いんだがな。急ぎの用事がある。もしかしたら元服後にゃアイツを町の外に仕事で行かせなきゃならんかもしれん。お前に会わせる前にな」

「どういうことです。そんなこと今までなかった……」

「ルーテシア様、お黙りなさい」

 頭領への追及は止まらない。だが、遂にベルトラインにそういわれてしまっては、もう黙っているしかなかった。

「まぁ、親父の俺としてもなるべくそうはなって欲しくはないからな。頑張っている最中だよ。んでもって俺からも頼みがある。」

 そこまで言うとお頭は笑った。笑っているというのに、いつもはあれほどの鬼のように怖い顔をしているのに、なぜか少し泣きそうにもルーテシアの目に映ったことで、彼女はその話を耳にせざるを得ない。

「もし、だ。元服が相成って、アイツと会うようなことがあっても、受け止めてくれると嬉しい。これまで通りじゃなくても良い。嫌いになっても構わない。だけど、繋がりは断ち切らないでやってくれ」

「私は、あの……」

「それは随分虫のいい話だな。シュットハルト殿」

「解かった上で言っている。ベルトライン殿」

 何か、やはり変わってしまうのだと自覚してしまったルーテシア、そうして結局笑顔で去っていったお頭の背中を見ながらも、彼女はしばらく身動きができなかった。