そんな兄弟のやり取りに、とうとうため息をつくルーテシア。そして……

「あぁ、もういい。分かった許すから。絶対よ! 二度と危ない事しないで」

 これ以上の説教は諦めた。勿論念には念を入れてはおいたが。  

「おう、約束! 約束な!」

 だが、彼がルーテシアの意図を正しく酌み取れているかは微妙なところかもしれない。

 カルバドスは目に見えるほどに喜んでいた。彼にとっては、多分もうルーテシアに怒られた事なんてどうでも良い。とにかく許してもらえた事、また遊べることが分かって嬉しくてしょうがないのだろう。

 それは、その後のカルバドスの態度からも見て取れた。

 なぜならばそれから一刻経ち、菓子が焼きあがり皆で食すとなった時に、

「いやぁ、やはり誰ぞ気持ちを込めて採ってきた木の実の味は格別じゃな!」

 と、ベルトラインが少し贔屓目に褒めたその瞬間、カルバドスは照れくさそうに笑って、美味しそうに、楽しそうに焼き菓子を頬張っていたのだから。

 彼のその笑顔をして、なんと言えば良いのか。犬のようにピコピコと振られた尻尾と、ピンと上に尖った耳が、見えたような気がした。