「そうじゃない! 無茶して! 何かあったらどうするの! それに関係のないライナも巻き込んで!」

 ルーテシアはカルバドスの強がりに大声を張り上げる。あの時の事を気にしないわけではないが、それしきの事でこのバカに、そして万が一にその弟に何かあったらと思えば耐えられない。しかも、それがルーテシアに許してもらう為だというのだから声を荒げないことなど不可能。

 ルーテシアの説教を聞いたカルバドスは、その可能性を全く考えていなかった事、許しを請うはずが逆に怒られてしまったことで絶句していた。
 少し、寂しそうな眼をしているが、それでもこれだけは聞いてもらわねばと、ルーテシアは手を緩めるつもりはなかった。……ライナが口添えするまでは。

「お姉ちゃん。あまり怒らないであげて。兄ちゃん、必死だったんだ。父さんからもうお姉ちゃんに遊んでもらえないものだと思えって言われて……ね?」

「バカライナ! お前それは……」

 ライナの一言に慌てふためくカルバドス。顔を真っ赤にしているところを見ればそれが嘘でないことは明白だった。