「あ、ありがとう」

「うしっ、じゃ……」

 袋をルーテシアが受取った瞬間、それだけ言い残してその場から立ち去ろうとするカルバトス。だが思いきり力をこめて抱きつき阻止しようとしたのはライナだ。

「兄ちゃん、そうじゃないでしょ!」

「ルーテシア! 盗んだ奴じゃないから安心しろ!!」

 弟に引き留められ大声で言い張るカルバドスはなんというか無様の一言。
 と、いうか口に出した言葉がおかしくてしょうがない。仲直りで盗品を差し出すバカがどこにいるというのか。

 いや、カルバドスならやりかねないが、それをもらってルーテシアが嬉しいと思うはずもない。ライナの存在がある事、そしてそんな彼が必死に何かを言わせようとしているのだという事が分かった彼女は、次第にその言葉を待っているさなかにテンプルに苛立ちが募り、とうとう……

「早くしゃべって!」

 吠えてしまった。

 目の前の二人は、まるで時間が止まったようにその動きを止めルーテシアを見つめる。

“なぁ、ルーテシアって母ちゃんみたいに怖えな”

“うん、兄ちゃん。ちょっと黙ろう? それ絶対にお姉ちゃんに聞こえているから”

「あ、アンタラァ……」

 喉から絞り出すまるで呪いを紡ぐような声。そんなルーテシアを前にして、カルバドスもライナも息をのんだ。