「ってことがあったの。爺じ」

「そりゃあ、あの小僧も大目玉ですなぁ。まぁ、しょうがありますまい。鉄は熱いうちに打てという。若いうちに善悪は教え込まねばなるまいて。頭領の子なら殊更その辺のバランス感覚は必要になるでしょうからのう」

 小屋に帰ったルーテシアは、今日の出来事を共に暮らしている爺じに告げる。ルーテシアは物心ついたころにはもうこの里で暮らしていたが、やはり物心つく頃からずっと一緒にいたのがこの爺じだった。

 ベルトラインと周りに呼ばれて里の者達からは親しまれている。

 時に優しく、時に厳しい、でもやはり甘い爺じがルーテシアは大好きだ。

「おっと、これは失言許されよ。忘れてくだされ。それで、いかがですかな? 今日はスープに自信がありますぞ!」

「うん、ホッコリ」

 ルーテシアの言葉に、同じようにホッコリと顔を綻ばせる爺じ。実はあの鬼の様な頭領でさえ、彼に一目を置いているのは密かな自慢だった。

「この鶏肉の串焼きも美味しい」

「そうですか! 老骨を折ってまで……、いや、実はですな。この鶏はワシが今日森で仕留めた物で、いやぁ森と言っても山中を歩くとあっては流石に……」

 自分よりも相当に年の離れた爺ジ、それでも丁寧な口調で優しく話しかけてくれる彼との食事。面倒だと思いつつもやっぱり行動を共にしてしまうカルバドスやその友達たちと遊ぶ日々。

 それがルーテシアの当たり前の世界。