「そんな訳……!」

「あるわきゃねぇだろクソガキがぁぁぁ‼」

「イッテェェェ‼」

 ルーテシアがカルバドス達に反論しようとしたその時だった。森の木々を揺するほどの大声、そして次いで聞こえたのは彼の父、頭領が息子の頭に拳骨を打ち込んだ鈍い音だった。

「父さっ! 何でここに! 嘘だろ、だって誰にも見られないで盗みは完璧にやったはず……ハッ!」

 里の頭領。カルバドスの父親ともあってやはり髪は赤く、肌は浅黒い。それだけじゃあない。背は高く、腕の筋肉など丸太のように力強く太い。その顎に蓄えられた髭は威厳を放ち、顔の所々に残る古い傷痕は、ルーテシアを含めた子供たちを萎縮させた。

「ホゥ? 盗みの認識はあったわけだな。それで泥棒じゃあねぇって!?」

 もう一度あたりに響くゴツッ! した音。頭領が浮かべる表情に、その拳骨に、そして頭を殴られて耐えられない様に涙目を浮かべるカルバドスの姿を見て、いたずら仲間は震えあがる。