華に満ち、天は明るく穏やかで、日に照らされた眼下にはお祭りムード、音楽や舞踏に湧いた街並みが広がっている。

 だけどなぜだろうか。これほどに待ち遠しかった。この日が来る事をずっと待ち望んでいたのに、どこか物悲しい。

「ねぇヴィクセン。カルバドスは……」

「城内を巡回中でございます。ルーテシア様」

 いつも世話になっている近衛騎士長、ヴィクセンの言葉が突き抜ける。

「貴女はこれから妻になる。形式上将軍が婿に入る。名目上アナタの立場が上ですが、実質支配権は彼にある。私だから特例で式当日、成婚なさる直前までアナタのお目通りを許されたのです。悲しい顔をなさっては怒られてしまいます。笑って下さい」

 鋭利な輪郭、整った秀麗な顔立ち。少しウェーブがかった白い髪を揺らしながら笑ってくれるヴィクセンにつられるようにルーテシアも笑った。

 今日は彼女の成婚の日、つまり結婚式。