廊下の壁に寄りかかる
ドアの奥からは春輝の落ち着いた声が聞こえた
何を話してるかはわからないけど、俺にはできない話をしてるんだろう
5分くらい経ったと思う
病室の中から咳き込む声が聞こえてくる
なんだろ。喘息ではないみたいだけど…
少し経っても治まりそうにない咳こむ声にだんだん不安が広がった
ドアを開けようかと考えたその時
ガラッと勢いよくドアが開いた
「先輩、杏乃ちゃんが吐血しました!」
俺に気づいた春輝がそう言った
と、けつ?
病室に入って目に飛び込んできたのは、呼吸困難に陥っている杏乃と真っ赤に染まったベッドだった
「杏乃!」
苦しそうな杏乃の隣によって背中に手を当てる
「ゲホッハァハァッ」
「吐けるだけ吐いていいよ」
「やめ、てッハァッハァ」
「え?」
「やめて!!」
叫び声をあげた杏乃
「杏乃ッ」
俺に対しての叫び声じゃなく、なにか幻覚を見ているみたいだった
手足をばたつかせる杏乃を抑える春輝
「杏乃ちゃん!ここにいるのは俺と明音先輩だけだよ?」
「ん、んん!!ハァッケホケホ」
「杏乃、落ち着いて!」
「先輩、安定剤もってきます!」
「頼んだ」

