white coat




朝になっても、明音はいなかった


「…お仕事だもんね…」


寂しさを堪えながらぼーっとベッドに腰をかける



今日もまた、栞愛ちゃんが来るんだろう


そしたらまた痛い目に合わされる


でも…明音は渡したくない…


だけど、痛いのもいや…



色んな気持ちが心の中でぐちゃぐちゃに絡まっていく



「…ッハァ」


不安に耐えきれなくなった心は悲鳴をあげて、涙となってこぼれる


心臓はバクバクと鼓動を早くしてく


それがあたしに焦りを覚えさせる



落ち着け…落ち着け…


そう思えば思うほどに呼吸は乱れるばかり


「ハァッ…ハァッ」


これじゃあ完全に過呼吸になるッ…



体を丸めて必死に呼吸を整えようとするのに、涙が邪魔をする


体にうまく酸素が回らなくなって手が痺れ始めた頃、玄関が開く音がした



明音だ



「ただいまー」


その声を聞いてさらに涙がこぼれる




まだ寝てると思ったのか、明音は真っ直ぐに寝室に来た


カチャー


「杏乃…?どうした?」


すこし焦り気味の声



「ゆっくり深呼吸…そう。ゆっくり…」



背中にそっと手を添えて呼吸を落ち着かせてくれる明音