早く。早く会いたい。そんな思いで涙を流したまんま病院まで走った。
やっと見えた看板に安心感と妙な不安感を覚えながら、角を曲がる。
明音っ…
ぼやけるあたしの視界に入ってきたのは、あたしが信じてた明音。
だけど、その隣に女の人がいて。
キスを…してた
「…え」
ドクンドクンと嫌な鼓動があたしの耳に届く
なんで、
なんでッ
握っていたカバンを思わず落とすと、あたしに気づいたのか明音が走ってあたしの前に来た
「杏乃、どうした?」
なんでそんな平気な顔でいられるの?
あたしを裏切っておいて。なんで?
メラメラと怒りがこみ上げて。
ううん。それ以上に悲しみがあたしの口を動かした。
「なんで…」
「ん?」
「なんで!?何今の!!あたしで不満だったなら言えばいいじゃん!! なんで優しくしたの?ねぇなんで?」
「見ちゃったよな…」
見ちゃった…?なにそれ。
「最低!!あたしで遊んでそんなに楽しかった…?あたしを裏切って今どんな気持ちなの?最高?楽しい?」
「ちがう。あれは…」
「もう知らない!!言い訳なんかいらないから!」
明音の言葉も聞かないまま、あたしはひどい言葉を並べいった
「あたしばっかり明音に動かされて、信じてたのに…!こんなんならあの人達にだってこんなことされなくて済んだのに!!」
あたしは何の為に栞愛ちゃんたちにこんな目にあわされたんだろう
「最っ低… あたしがどんな気持ちでここまで来たか知らないくせに…
…もういらない…こんなの…いらないっ!!」
明音から貰ったおそろいのキーホルダーをカバンから外して投げつけた
「おい、どうしたんだよ!」
「どうしたじゃないよ!!
もう…誰も信じないから」
そうだ。
誰かを信じるからこんな気持ちにならなきゃいけないんだ。
信じることの怖さなんてとっくの昔に知ってるはずなのに。
もうやめよう
全部全部。あたしには、必要ない。
ひとりでいい。

