元カレバンドDX

「これ……あたしのバンドの曲じゃん……」

「そうだよ~!!“蜂蜜”のアコースティックバージョン!!陽愛ちゃん、喜ぶかな~と思って。歌ってよ!!」

「……うん」

 あたしは、すぐにでも溢れ出そうな涙をこらえながら歌った。

 風太が奏でるギターの音は、柔らかくて暖かくて、真綿のようにあたしの声を包み込んだ。

 まさか、風太と一緒に音楽ができるなんて……

 風太があたしのバンドにも気をかけてくれていたなんて……

 あたしが始めたバンド(音楽)は、確実にあたしと風太の潤滑油になっている気がした。

 思惑通り、風太の元カノの存在なんて気にならなくなったし、逆に、風太の方があたしのバンドを気にしているみたいだった。

「男のメンバーがいるから心配だな……」なんて言う風太に「自分だって、女のメンバーがいるじゃん!」なんて言って、あたしはよくからかって遊んでいるのだった。

「陽愛ちゃんの歌声は天使みたいだね」

 曲の間奏に風太が漏らした言葉は、さらにあたしの涙を誘った。