元カレバンドDX

「お疲れ、陽愛ちゃん」

 そこにあるいつもと変わらない優しい顔に安心して、あたしは助手席に乗り込む。

「今日も楽しかった~!」

「それはよかった!」

 風太は車を動かし、自宅へと走り出した。

 今日は風太の家でDVDを観る予定なのだ。

 途中、レンタルビデオ店でDVDを貸り、さらにコンビニに立ち寄り食料を調達していると、風太の家に着いたのは夜の10時をまわる頃だった。

 いつものように、忍び足で風太の家におじゃまして、飛び込むように部屋に入ると、あるものがあたしの目に飛び込んで来た。

「あ!なにこれ!!風ちゃんどうしたの!?」

「見ればわかるじゃ~ん!!」

 風太はおどけるような声を出した。

「わかるけど、なんでドラムの風ちゃん家にギターが!?」

 風太の部屋にあったのは、この部屋にも風太にも似合わない、アコースティックなギターだった。