元カレバンドDX

「陽愛ちゃんが書いてきた詩あるじゃん。“黒いクレヨン”だっけ?あれ、まじ最高だったし」

 大声で笑う充晴に対して、あたしは苦笑いするしかなかった。

「本当さ、陽愛ちゃんが書く詩はどれも味があっていいよ。今練習してる“蜂蜜”も歌詞のおかげで、さらにパワーアップしてるよな」

「わ~そう言ってもらえて光栄です!」

 褒められると調子に乗るあたしを、充晴は知ってか知らずかよく褒めた。

「あ、LINEきた……ごめんなさい、そろそろ行かなくちゃ!」

「彼氏から?」

「はい」

「練習が終わると必ず迎えに来るなんて愛されてんね~お陽愛さまは。じゃあまた来週な!」

「はい!!」

 あたしは充晴に手を振って、元気よくスタジオを飛び出した。

 雑踏する街の中に風太の車を見つけると、必然と小走りになる。

「おまたせ!」

 車のドアを開け、風太の顔を確認した。