元カレバンドDX

「なんだかもう陽愛ちゃんのバンドになってきてるな」

 バンドのリーダー的存在であり、ベースの充晴(みつはる)が横に座って来た。

「あ、本当ですか?よかった」

 タバコの煙が舞うスタジオの休憩所で、あたしは風太とLINEをしているところだった。

「初めて会って歌ってもらったときの感動は今でも忘れないよ。ぶわーって鳥肌が立ったんだよね。なーんてウソだけど」

「え!?ウソなんですか!?」

「冗談だよ冗談。本当にそう思った」

 そう言ってくすくすと笑う充晴は、4つ上の社会人らしく、大人の風格があった。

「もう1か月も前になるんだな」

 風太の元カノ騒動以降、オリジナルバンドをやると宣言したあたしは、本当にオリジナルバンドを組み、すでに活動して1か月が経っていた。

 といっても、まだスタジオで練習している段階だけれど。