元カレバンドDX

「……うん。なんでわかったの?」

 風太の声のトーンは、急に低くなった。

「風ちゃん、ボーカルの子だけは紹介してくれなかったし、本番でリストバンドも外したでしょ?もしかしたら元カノのボーカルさんに配慮して外したのかなーと」

「そっか、内緒にしててごめんね。陽愛ちゃん絶対に嫌がるのわかってたし……本当ごめん」

「……だよ……嫌だよ、そんなのすごい嫌だ!!元カノと同じバンドで活動してるなんて、絶対に嫌!!」

 涙がぽたっと手の甲に落ちた。

「嫌だよ、スタジオで練習したり、ライブしたり、ボーカルの子と2人で曲作りもするって言ってたよね?元カノとそんなに同じ時間を過ごしてるなんて嫌だ……」

 風太が、バンドを大事にしていて、なによりバンドが好きなのはよく知っていた。

 だから、なおさら許せなかった。

「……ごめん」

 でも、どうにもならないこともわかっていた。

 風太は何も悪くない。誰も何も悪くない。