元カレバンドDX

 真っ暗な部屋に、真っ暗闇な人間がひとり。

 あたしは、電気もつけずに、ひとつのことを考えていた。

(たぶん……きっと、いや絶対そうだ……)

 たまに冴え渡る自分の勘が外れたらいいと、これほどまでに思ったことはなかった。

 外されたリストバンド……

 紹介を受けなかったボーカルの子……
 
 そして、あたしの中で少し前から気になっていた、風太を淡白にさせた「昔の彼女」……

 そろそろかな?と時間を見計らい、あたしはスマホに手を伸ばした。

 プルルルプルルルル……呼び出し音が、やけに長く感じる。

「もしもーし!」

 6回目のコールで、やっと風太が電話に出た。