元カレバンドDX

「どしたの陽愛。元気ないね?風太くんのライブよかったじゃ~ん!!!」

 ライブハウスからの帰り道、小巻があたしの顔をのぞき込んだ。

「…………」

「ちょっとなに?まじでなんかあったの?」

 小巻の心配そうな顔がどアップになる。

「風ちゃん、あたしがあげたリストバンドつけてなかったの」

「え?リストバンド?」

「うん。ライブするときにつけてねって言って渡したリストバンド……小巻もライブ前に見たでしょ?」

「あぁ。ただ単につけ忘れちゃっただけなんじゃないの?いったん外して忘れることってよくあるじゃん」

「そんなこと絶対ない。そもそも、なんでいったん外すの?絶対なにか理由があるんだと思う」

「まぁ、あとで直接聞けばいいじゃん。心配するようなことじゃないって。それよりボーカルの女の子!かわいかったね~お人形さんみたいでさ~」

「……うん」

「そういえば、ボーカルの子だけは紹介してくれなかったね、風太くん。近くで見てみたかったのに残念~」

「…………!?」

 まるで雷のような衝撃が身体中に走り、あたしは急に不安に襲われた。

 あたしの中の疑念が裏付けされるような、それは点と点が線で繋がる感じ。

「小巻……あたしの勘て、たまに冴えちゃうの」

「ん?今度はなに!?」

「どうしよう……あたしたぶんすごく嫌だ……」

 思いのままを口に出すと、あたしの目からは、ツーッと涙が落ちてきた。

「やだ!?泣いてるの!?」

 驚きの表情に変化した小巻の顔が、涙のせいで歪んで見えた。

 小巻の優しさに支えながら、なんとか池袋駅に着いたあたしは「はっきりしたら言うから」と小巻に伝え、電車に乗った。

あたしはこれから、確認作業をしなくてはならない。