元カレバンドDX

「あ、ライブ楽しみにしてるんで、がんばってください」

 ベースの彼も、ギターの彼女も、にこやかな表情で「差し入れありがとうございます」と丁寧な対応をしてくれた。

「じゃあ、そろそろ楽屋に戻るから、ライブでまた会おう!」

 たまにかっこいいことを言う風太は、メンバーを連れて、楽屋に戻っていった。

「かわいい彼氏じゃん、風太くん」

 横でずっと見ていた小巻が、あたしの横っ腹をつつく。

「でしょ~?だってあたしの自慢の彼氏だもん!」

「なんかいろんな意味でお似合いだよ、陽愛たち……」

「なにそれ、どういう意味!?」

「だからいろんな意味で。さ、ドリンクもらいに行こっか」

「ちょ、小巻~」

 小巻をドリンクコーナーまで追いかけて問い詰めたけれど、結局最後までその意味を知ることはできなかった。

 そして、ドリンクを飲みながら、風太のライブが始まるのを待つのだった。