元カレバンドDX

 そうか。ライブはただ歌うだけではなく、ボーカルのあたしは、MCとやらをしなくてはいけないのだ。

 お客さんの前で、歌って、しゃべって、また歌う。

 それは、想像するだけで、あたしの気分を高揚させた。

 あたしは、幼いころから歌手になりたくて、ずっとバンドスタイルでライブをするのに憧れていた。

 テレビの中で楽しそうに歌うバンドのボーカリストのように、いつしかなりたいと思っていた。

 その夢が、これから叶おうとしているのだ。

 ライブの出番が近づき、あたしは、衣装に着替えるためにトイレに向かった。

 個室で着替えてから外にある姿見で全身を映す。

「あ、この耳つきワンピ超かわいいじゃん!!でもひょう柄だから、猫じゃなくてひょうなのか!?」

 自分にしか分からないひとりごとをつぶやきながら、それにしても、あたしのアッシュブラウンのボブカットは素敵だわ、と思った。

 そして、メイク直しをしようと、コスメポーチを取り出した。

 つけまつげと、カラコンと、黒いラインでふちどる自慢のアイメイクは、今日も瞳を大きく見せる。

 緊張して赤くなる頬を隠すようにと、濃いめにオレンジのチークを足して、唇にはチェリー色のグロスで艶を入れた。

 そして鏡に映る自分に喝を入れた。

(いっちょ、やってやろーじゃーん!!!)