あたしの言葉に、風太が焦り割って入った。

「陽愛ちゃん!オレ、金井さんに電話して、早く来るように言うから!ねっ!」

 スバルは、また音楽雑誌に目を落とす。

 ベースの充晴とキーボードの北斗は、「やれやれ」といった表情で、スマホをいじり始めた。

 スバルのしこりだけは、未だにあたしの中で残っているらしい。

 なぜか、いつも当たってしまうのだ。

 大学に入って初めて出来た彼氏で、初体験の相手が、

 女関係にルーズな遊び人だったなんて、やっぱり許せない。

「スバルくん、お台場行ったの覚えてる~?」

 “ぎょっ”とした目つきで、あたしを見たスバルはうざそうな顔をした。

「あたし、たぶん一生忘れないと思う」

「……そう、よかったね」

 その、すかした顔が気に食わなくて、あたしはまた食ってかかろうとしたが、風太の心配そうな顔を見てやめた。

 と同時に、音楽プロデューサーの金井とマネージャーがミーティングルームに姿を現した。

「あ!金井さんたち、おそ~い」

「ごめんごめん。ちょっと急用の電話があって。それじゃあ、みんな揃ってるし、会議するか」

「は~い!」

 金井の登場に、あたしは甘い声を出した。

 そして、風太には、いつも気を遣わせて悪いなと、ちょっとだけ反省をするのだった。