元カレバンドDX

「玄関、狭いんだけどごめんね」

 ドアを開け、スバルを先に部屋へと通す。

 ひとり暮らし用の狭いマンションの小さな玄関に、初めて若い男モノの靴が揃えられた。

 男のお客さんは、お父さんを除くと初めてのことだ。

 なんだかドキドキしながら、あたしも自分の部屋へと入る。

「適当に座っててね」

 スバルは「おう」と言うと、低いベットの上に座った。

 あたしは、用意していたお菓子とジュースをローテーブルの上に置くと、スバルとは少しだけ離れて座った。

「部屋も可愛いな」

「そう?どうもありがと」

 昨日、まとめて片付けたあたしの部屋は、ぬいぐるみやおもちゃなど、ファンシーなものがたくさんあって、全体的にピンク色で統一されている。

 それにしても、男の人とふたりきりで、何を話せばいいのだろうと、あたしは少し引きつり気味に笑う。

 今流れているこの沈黙にも耐えられない。

「あ、音楽でも聴かない?今、すごいハマってる地下アイドルがいるんだ~」

 無音だからいけないんだ!音楽でも聴こう!と、アイデアがひらめいたと同時に、あたしの行動はすぐさま実行に移された。

PCから流れるアイドルソングに、スバルは「おれもこういうの好きだよ」と言って、ギターの弾きまねを始めた。

 そういえば、スバルとはよく電話で音楽の話をしていて、スバルは、あたしのおすすめする音楽をぜひ聴いてみたいと言っていたのだ。