「歌手志望ということで、作詞もなさるんですね?」

「はい!詩を書くのはすごい好きです!」

「それはいことですね」

 優しく微笑む坂井田の表情に、手ごたえを感じる。

「強い個性も感じますし、あなたには光るものがありますよ」

 そう言って穏やかに笑う坂井田に、やはり手応えを感じずにはいられなかった。

 それからいくつかの簡単な質問を受けて、面接はあっという間に終わった。

 最後に、来週、実技審査をするという約束をしてあたしはプロダクションをあとにした。

 帰り道の途中、可愛いカフェを発見して店内に入る。

 カプチーノを頼むと、泡の上にハートの絵が書かれていて、すごく感動したあたしは、またスマホで写真を撮った。

 カプチーノを飲んで、窓の外の風景を見ながら思う。

 あたしは、実技審査に、なんとしてでも受かりたい。

 周りが就職活動をする中、あたしはバンド活動をして、夢だけを追って来た。

 あたしの就職活動は、オーディションを受けることだと考え、最近はもっぱら応募書類を送る日々だった。

 そして、今回こうやってチャンスが巡ってきたのだ。

 北斗との恋愛(?)以降、あたしは恋をしていなかった。

 「夢を叶えるまで彼氏なんていらない!」と小巻に宣言して、あたしはひたすらがんばっていたのだ。

 それに、彼らをなんとしてでも見返したいあたしに、恋をしている暇などない。

(見てろよ!元カレたち!)

 まぶしい太陽に向かって、あたしはそう吠えるのだった。