元カレバンドDX

 彼のおねだりするような甘い声が耳に付いて離れない。

 ぶっちゃけあたしは、ひとり暮らしのこの家に、男の人を上げたことがないのだ。

 まだ彼氏でもない男の人を簡単に上げてもいいものなのだろうか。

「う~ん……」

 他にも躊躇する理由はあった。部屋は散らかっているし、男の人とふたりきりなんて、ドキドキして固まってしまいそうだ。

 けれど、スバルくんが遊びに来てくれるなんて、なにより彼の方から遊びに来たいだなんて、こんなチャンスは2度とやってこないかもしれない。

「……わかった!いいよ!」

 それにあたしは、この超短時間で彼のことを好きになってしまったのだから、ようく考えたら断る理由もないのだ。

 それからあたしたちは、まだ付き合ってもいないのに、甘いトークを深夜まで繰り広げた。

「カップルアプリしようよ!」とか「今度2人で夢の国に行こう!」とか「陽愛の声は癒されるな」なあんて言われたり……

 そんな甘いトークは何時間も続き、気づけばスズメの鳴き声が「チュンチュン」と聞こえ、空は明るくなっていた。