元カレバンドDX

「じゃあやっぱり、“歌姫募集のオーディション”に受かったってことなんですか？」

「ん～そういうことになるのかな～。ぼくね、好きな声があると、とっておきたい癖があって、気になるボーカルさんには、よくこうやって声を掛けるんだ」

「へぇ……そうなんですね……」

　北斗の言葉を受けて、きっとあたしだけじゃないんだ……と少しへこんだ。

　でも、あたしは彼の言うところの「気になるボーカルさん」なわけで、ここまでプライベートに付き合っているのは、あたしだけに違いない。

　そんな風に前向きに考えることにして、自分を奮い立たせた。

　現に、あたしと北斗はそういう仲にもなっているし、最近の彼とのＬＩＮＥや電話のやりとりをみても、小巻の言う「お気に入り」になっているのは確実だと思った。

　それに、今こうして、北斗と向かい合っているのは紛れもない事実なのだ。

　テーブルに運ばれてくる鮮やかなピザは、どれもとても美味しくて、さらにあたしを元気づけた。

　美味しいものを食べると、こころも身体も元気になる。

　あたしは、ピザを食べながら、あることを決意するのだった。