元カレバンドDX

 この人は、本当に非の打ちどころがないないくらいかっこよくて、顔がにやけてしまう。

 あたしはこころの底から「ありがとうございます」と言って、感謝の気持ちを伝えた。

 それからいつもの部屋に戻って、コーラスのレコーディングを始めた。

 コーラスのレコーディングは1時間もしないうちに終わって、「早く終わったから外にごはんでも食べに行こうか」という北斗の提案を喜んで受け入れ、外へ出掛けた。

 北斗の運転する車が向かった場所は、郊外のショッピングモールで、あたしと北斗はピザが美味しいと有名なイタリアンのお店に入った。

 平日だからか人はまばらで、静かに話すことができる。

 メニューの注文を北斗にまかせて、あたしは最初に出された水を飲んでいた。

 店員が去るのを見て、あたしは話しかける。

「あの、レコーディングした曲ってどうなるんですか?」

「ん?なんか仕事で使えたらな~と思って。そしたら陽愛にも知らせるから」

「はい、ありがとうございます!」

 もしかしたらデビューのきっかけになるかもしれない……と、あたしの夢は膨らむ。