元カレバンドDX

「グランドピアノ……すごいですね」

「あぁ、見たんだ。さっきまでちょっと弾いてたんだよね」

「家に、あんなピアノがあるなんて知らなかったです!!」

「だって、ぼくだよ?」

 なんて笑いながら冗談を言う北斗に、あたしの笑顔は弾ける。

 こっそりのぞいた部屋で見たものは、真っ白で大きなグランドピアノだった。

 あたしは、初めて間近で白いグランドピアノを見て、感動していた。

「もしよかったら1曲聴く?」

「え!?いいんですか!?」

「いいよ」

 ニコッと微笑む北斗に連れられて、ピアノの置かれている部屋へ行く。

 ピアノの前に座った北斗は、細い指でしなやかに鍵盤を鳴らした。

 身体を揺らしながらピアノを弾くその姿は、絵にしたいくらい素敵で、まばたきを忘れるほどだった。

「すごい!今の曲、なんの曲ですか?」

 ピアノを弾き終えた北斗に話しかける。

「もう2度と弾けない曲。適当に弾いただけだから」

「アドリブってやつですか?」

「そうとも言うね」